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音響エンジニアはきつい?拘束時間・給料・席問題のしくみを解説

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音響エンジニアのきつさは、本人の根性や体力の問題ではありません。本番のミスゼロ要求、仕込みからバラシまでの長時間拘束、上がらない単価は、どれも業界の収益配分と現場の物理条件から来ています。

拘束時間は現場の物理条件で決まります。単価はライブ収益のうちどれだけ人件費に回るかで決まります。昇格は現役のメインエンジニアが抜けるタイミングに居合わせるかどうかで決まります。体力や技術を上げても、この三つはほとんど動きません。

この記事では、その四つがなぜ起きているかを解説します。自分が感じているきつさの原因が業界構造から来ているのか、自分の体力や好みから来ているのかが見えてきます。

この記事の内容

きつい理由①:本番中のミスが許されない緊張感

コンサートのミスは命取りです。アクシデントが起きれば、音響スタッフの技術不足という判断が下ります。最悪の場合、契約を切られます。リハーサルでどれだけ詰めても、本番でしか判定は出ません。

しかも、本番中に突然音が出なくなるトラブルも起きます。原因が機材なのか、ケーブルなのか、回線なのか。観客が音を聞いているあいだに切り分けて、復旧の手を打たなければなりません。

マイクの調子は温度によっても変わります。前日リハーサルで安定していた機材が、本番当日の会場気温で挙動を変えることがあります。

会場ごとに作るべき音も違います。小さな会議室では声が籠もりやすく、屋外のイベントでは環境音にかき消されないレベルが必要です。体育館では反響を読みながら、観客の声でアナウンスが消えないようレベルを調整します。どの会場も事前に正解を決められません。

しかも、音作りに正解はありません。最後に頼れるのは自分の耳だけです。手元の感覚しか手がかりがない仕事で、ミスだけは外から技術不足と判定されます。本番が終わるまで、その判定にさらされ続けます。

きつい理由②:仕込みからバラシまでの拘束時間と体力消耗

PA・レコーディング・放送音響の現場では、朝から現場に入り夜に撤収完了してヘトヘトで帰って寝る生活が大半を占めます。夕方開演のコンサートだとしても、朝集合で機材搬入と仕込みを始め、リハーサルを経て本番に入り、終演後の撤収まで終えて現場を出るのは深夜近くという流れになります。

本番が終わってからの撤収作業は、現場の音響スタッフにとってある意味本番と呼べる工程です。一日で完結する仕込み→リハーサル→本番→バラシの全工程が一日に凝縮されるため、最もハードな撤収が一日の終わりに残ります。ステージ上の機材を片付けて、トラックへの積み込みまで終わらせて、ようやく現場を出られます。

また、リハから本番までの待機時間も、スタッフには無駄な拘束時間として積み重なります。野外フェスや屋外イベントでは、雨が降っても設営と撤去の作業は止まりません。PA機材の一つ一つは結構な重量があり、機材を運ぶ動作を一日に何度も繰り返します。

本番中の集中力に加えて、本番前後の運搬で削られる体力。一日が終わる頃には言葉数も減ります。

レコーディングの現場でも事情は似ています。アーティスト側のスケジュールに合わせて深夜セッションが組まれると、気づけば終電がなく深夜3時まで作業が続きます。一日の終わりが見えない状態は珍しくありません。人手不足やコストの問題から、夜通し仕込みとリハーサルを短期間で行う現場もあります。

たとえば機材移動という工程ひとつとっても、純粋な力仕事です。腰を痛めて辞めたという話もあり、収入に見合わない勤務時間の長さで辞める人が後を絶ちません。職人系の世界という性格上、先輩との関係性が現場の動きやすさを左右するため、体力面の消耗に加えて人間関係の気疲れも一日の終わりに残ります。

音響エンジニアの仕事がPA・レコーディング・放送の分野でそれぞれ拘束時間や働き方が異なる点については、職種全体の概要をまとめた記事で整理しています。

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きつい理由③:給料が低く、上がる見込みも薄い

友人価格で1日5000円の現場を受けるフリーランスもいます。月に15日入っても7万5千円です。

アシスタント段階では300〜400万円、正社員でも400〜600万円程度とされる報告もあり、音楽・エンタメ業界の中でも単価が低い側に分類されます。大手の音響会社に正社員入社できない限り給料は少なめで、修行のため無給という現場すら一部に残っています。フリーで高いギャラを取れる層はごく一握りです。

技術が低いから単価が安いわけではありません。1日の日当は技術の習熟よりも、ライブ収益のうちどれだけが人件費に回るかで決まります。会場費・機材費・人件費を圧縮しなければチケット価格が成立しないため、しわ寄せがエンジニアの日当に向かいます。地方都市のライブ単価で起きやすい現象です。

そしてもうひとつ、単価を硬直させているのが評価のされ方です。サウンドエンジニアの仕事は誰を担当したかという実績ベースで語られ、技術の中身が正確に評価される余地がほとんどありません。アーティストは表現者として名前が前に出る一方、エンジニアはどこまでいってもクレジットに残りません。

クレジットされても、良い音だったかどうかは観客や発注側にはほぼ伝わらない仕組みです。だから若手は、技術を上げても担当アーティストの知名度が上がらない限り単価が動かないという壁にぶつかります。

音楽業界の給料・単価は音響エンジニアだけの問題ではありません。業界全体のきつさを把握しておくと、会社選びや入職の判断に役立ちます。

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きつい理由④:席問題とキャリアの天井

メインエンジニアになるには、現役のメインが引退して席が空くのを待つしかありません。技術を磨いても、ポジションが空かなければ昇格は動きません。

音響会社の内部はメインエンジニアとアシスタントで席が分かれています。新人は雑用からスタートし、機材の搬入・ケーブル巻き・先輩の補助を何年も続けます。経験を積んでも席が空くタイミングに居合わせなければ、メインの椅子には届きません。技術や経験ではなく、誰がいつ抜けるかという他者の事情に上限が決まる仕事です。

会社員の枠を外しても、道が開けるわけではありません。フリーランスに転じると、評価の基準は誰を担当したかという実績ベースに置き換わります。どんな技術を持っているか、どんな音を作れるかという中身は、業界の外からも内からもほとんど語られません。

担当アーティストの知名度がそのまま自分の評価になります。会社を出ても、今度は実績評価という別の壁に当たります。

そして、年齢の天井も控えています。一生現場で続けられる仕事ではなく、ある程度の年齢になると管理職に回るのが現役の標準です。マイクの前から離れて、後進の管理や案件の調整に役回りが変わります。

他業種への転身を考えても、音響業界で積んだ技術が社外で通用する場面は限られます。

キャリアの制約は職場の枠だけにとどまりません。そのうえ、好きなジャンルだけを選べる仕事でもありません。ロックや音楽ライブを志望して入っても、案件は日舞・バレエ・講演会まで幅広く回ってきます。担当する現場は会社のスケジュールで決まり、自分の音楽的な好みが入り込む余地は少ないままです。

音響エンジニアの席問題や継承制を知ったうえで、それでもなり方を確かめたい人向けに就職・転職の流れを解説しています。

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それでも続けている人が持っている判断軸

本番中の緊張、深夜のバラシ、上がりにくい単価、メインに届かない席。こうした事実は、続けている人の前にも同じように転がっています。それでも辞めない人は、給与の額以外に現場で手に入るものを持っています。

20代の現役PAには、ツアーや出張で各地のうまい酒が飲めること、好きなミュージシャンに会えること、仕事が趣味みたいなものだという人もいます。ライブハウスやホールに立つPAなら、客が良かったと笑顔で帰っていく瞬間が手元に残ります。レコーディングのエンジニアであれば、ずっと大好きだったバンドの録音を担当した現場が後から貴重な体験になります。給料明細には出てこない見返りです。

ただし、好きな現場を全部取っていれば続くかというと、そうとも限りません。野外フェスが完全復活した時期に、仕事を入れすぎて体力の限界を超えかけたフリーランスがいます。何でもかんでも取っていたら自分の時間も体力も持たないと気づいてから、仕事の取捨選択をするようになっています。続けている人ほど、好きという感情だけでは長続きしないことを途中で知っています。

フェスもツアーもレコーディングも全部やる、ではなく、自分が一番受け取りたい現場を一つ決め、それ以外を減らす選び方をするエンジニアがいます。クラブの音響に案件を絞り込んだり、ライブ一本に専念したりと、形はさまざまです。きつさが個人努力では消えないと分かったうえで、何を残すかを自分で決めている人たちです。

自分がこの仕事に向いているかどうかを確認しておくと、続けるかどうかの判断を立てやすくなります。

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音響エンジニアのきつさに関するよくある質問

音響エンジニアの給料はいくらですか

ライブ音響・レコーディング・放送の分野によって給与水準は異なり、放送や映画系のほうがライブ系より高い水準になります。

正社員かフリーランスかでも収入の安定度が大きく変わり、フリーランスは担当する案件の数と単価で収入が変動します。

音響エンジニアに求められるスキルは何ですか

マイク・スピーカー・ミキサーの基本操作に加え、レコーディング系ではDAWの操作が求められます。

機材トラブルが起きた際に素早く原因を切り分けて対処する判断力も、どの現場でも欠かせません。

音響で有名な会社はどこですか

ライブ音響を専門とする会社、レコーディングスタジオを運営する会社、放送局の音響制作部門など、現場の種類によって強みが分かれています。

自分が目指す領域(ライブ・レコーディング・放送)を決めてから会社を絞ると、求人の選び方が整理しやすくなります。

女性でも音響エンジニアを続けられますか

実際に長く続けている女性エンジニアはいます。

体力を使う撤収作業が多いため、案件の数と種類を自分で絞りながら続けている人もいます。

まとめ

本番中の緊張、長時間の拘束、上がらない単価、埋まったままの席。この四つは、どれだけ技術を磨いても個人ではほとんど動かせません。

それでも現場に立ち続けている人はいます。給与の額ではなく、現場で手に入る別のものを数えている人たちです。

この四つは入職後も消えません。続けることを決めた人は、それを知った上で現場に立っています。

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