VTuber事務所18選|契約金トラブル・退所時アバター権利まで応募前に確認
VTuber事務所はにじさんじやホロライブのような大手から、IRIAM特化のVライバー事務所まで100社以上あります。配信ノルマも収益分配率も契約ごとに違い、自分に合う1社が見えにくくなっています。
選び方を間違えると、月単位の配信ノルマで本業との両立が崩れたり、退所時にアバターを持ち出せず再スタートになったりします。業界では高額な受講料を要求する詐欺オーディションも報告されています。
この記事では契約金・配信ノルマ・アバター権利から、18社の特徴とオーディション応募手順を解説します。読み終えた時点で、ブランドの華やかさよりも契約条件を見て応募先を判断できるようになります。
VTuber事務所の選び方
VTuber事務所選びで応募者の手元に残るのは、契約書に書かれた条件です。契約金の有無、退所時のアバターの扱い、配信頻度のノルマ。所属タレントの人気や事務所のブランドではなく、最初に比較すべきはこの条件です。「事務所が多すぎて選べない」「大手は倍率が高い」と感じる応募者ほど、契約条件で候補を絞ると判断が速くなります。
規模で選ぶ(大手・中堅・Vライバー特化の使い分け)
VTuber事務所は、規模と配信プラットフォームで大きく3グループに分かれます。
YouTube中心の大手は、にじさんじ・ホロライブの2社です。にじさんじを運営するANYCOLOR株式会社は東証プライム上場、ホロライブを運営するカバー株式会社は東証グロース市場上場で、ホロライブJP/EN/ID/DEV_IS合計70名以上のタレントが所属しています。一方で応募者が「大手は倍率が高い」と感じたときに目を向けるのが、ぶいすぽっ!・ななしいんく・あおぎり高校といった中堅・特化型。FPSやバラエティなど特定ジャンルに強みがあります。
もう一つの軸が、IRIAMを中心としたVライバー特化型です。Razzプロダクションは累計1500名以上のVライバーをサポートしてきた実績を持ち、Lapis Liveは400名以上のタレントが活動しています。男性キャラクター専門のKalanプロダクションも同じ系統です。
応募先を絞る出発点は、配信したいプラットフォームです。YouTubeで活動したいならにじさんじ・ホロライブ系を見ます。IRIAMでスマホ配信を中心にしたいならRazz・Lapis Live系。FPSや学園系などジャンル先行で動きたい場合は、ぶいすぽっ!やななしいんくのような中堅事務所が候補です。
契約金・授業料を要求する事務所は避ける
VTuber事務所選びで一番損をしやすいのが、契約金や授業料の請求です。業界では「2年で約40万円」の受講料を要求された事例が報告されています。応募段階で外したい事務所の特徴を順に見ていきます。
- 面接で年収・貯蓄額を聞かれる: 配信者の選考に経済力のヒアリングは不要。応募者の支払い能力を測る面接です
- 研修費・授業料・契約金の請求: 正規の事務所はオーディション通過後にレッスン料を取りません。VTuber検定のような実在しない研修名を出した事例もあります
- 即日契約を迫られる: 「今日中に契約しなければ」と急かす事務所は、応募者に持ち帰り検討の時間を与えません
立ち絵代やアバター制作費を応募者負担とする事務所も同じ系統です。詳しい被害事例は後述の「悪質事務所・詐欺オーディションへの警戒」で扱います。
退所時のアバター権利を契約前に確認する
事務所を辞めるとき、自分のアバター(ガワ)を持って行けるかは契約書で決まります。
VTuber業界では、卒業・移籍・独立時にアバターを引き継げない契約が多数派です。アバターの著作権が事務所側にある契約だと、退所と同時に見た目もキャラ名もリセットされ、別人として再スタートになります。立ち絵の料金も事務所が負担するのが業界の通例で、応募者負担を提示してくる事務所は契約条件が応募者に不利な側に寄っています。
例外もあります。元ななしいんく所属の周防パトラは、会社との協議の末にガワをローンで買い取り、フリー転身しました。会社側が買い取りに応じた異例の事例で、他の応募者が再現できるわけではありません。
契約書に署名する前に、退所時のアバター権利・買い取り条件・移籍時の扱いを書面で確認します。応募者側で取れる事前の確認はここまでです。
個人勢から段階的に目指す道もある
大手のオーディションは倍率が高く、にじさんじ・ホロライブとも常設オーディションを停止している期間が長くなっています。にじさんじはVTA(バーチャル・タレント・アカデミー)として候補生を募集する形に切り替えており、応募の窓口自体が狭まりました。
そこで応募者の選択肢に入るのが、Vライバー事務所からのスタートです。IRIAMで個人勢として配信を始めて、3〜6ヶ月後に事務所のスカウトを受けるルートが業界内にあります。ハードルの低いVライバー事務所に所属してから大手のオーディションに挑む段階的な進み方です。
個人勢として配信実績を積んでから事務所に応募すれば、面接で見せられる数字が増えます。配信時間・同時接続・登録者の推移を提示できれば、未経験応募よりも事務所側の合否判定で有利に働きます。
VTuber事務所一覧18選
応募先の候補に挙がる18社を、運営会社・所属タレント・応募条件で並べます。YouTube中心の大手から、IRIAM特化のVライバー事務所まで1社ずつ確認していきます。
| 事務所 | 規模/ジャンル | 運営会社 | 応募条件 | オーディション状況 |
|---|---|---|---|---|
| にじさんじ | 大手・YouTube総合 | ANYCOLOR株式会社 | 公開なし | 常設停止中・VTA候補生形式 |
| ホロライブ | 大手・女性アイドル | カバー株式会社 | 18歳以上・日本居住者 | 不定期開催 |
| ホロスターズ | 大手・男性総合 | カバー株式会社 | 公開なし | 不定期開催 |
| ぶいすぽっ! | 中堅・FPS/eスポーツ | 株式会社バーチャルエンターテイメント | 公開なし | 不定期開催 |
| ななしいんく | 中堅・音楽/バラエティ/ゲーム | 774 inc. | 公開なし | 公開情報なし |
| Neo-Porte | 中堅・ゲーム配信 | 株式会社Neo-Porte | 公開なし | 約2年ぶりに再開 |
| あおぎり高校 | 中堅・学園系/ショート | 株式会社viviON | 公開なし | REALITYと共同開催 |
| のりプロ | 中堅・クリエイター主導 | 株式会社のりプロ | 公開なし | 公開情報なし |
| .LIVE | 老舗・総合 | 株式会社アップランド | 公開なし | 公開情報なし |
| 神椿 | 音楽レーベル型 | 株式会社THINKR | 公開なし | 公開情報なし |
| Re:AcT | 中堅・ゲーム配信 | 株式会社mikai | 公開なし | 公開情報なし |
| RIOT MUSIC | 音楽特化・VSinger | 株式会社RIOT MUSIC | 公開なし | 公開情報なし |
| Palette Project | バーチャルアイドル | ENILIS Inc. / jig.jp | 公開なし | 新体制移行直後 |
| VOMS project | 個人プロデュース | GYARI個人運営 | 公開なし | 不定期開催 |
| Balus | XR/3Dライブ特化 | バルス株式会社 | 公開なし | 公開情報なし |
| Razzプロダクション | Vライバー特化・IRIAM | 株式会社BET | 16歳以上・月10日以上・合計30時間以上 | 常時応募可 |
| Kalanプロダクション | 男性専門Vライバー・IRIAM | 株式会社BET | 16歳以上・月15日以上・月50時間以上 | 常時応募可 |
| Lapis Live | Vライバー特化・IRIAM | 株式会社Lapis Live | 月40〜50時間以上・半年継続 | 常時応募可 |
にじさんじ

ANYCOLOR株式会社が運営する事務所で、2017年5月設立。2022年6月に東証へ上場し、現在はプライム市場で取引されています。
月ノ美兎・葛葉・剣持刀也が看板で、にじさんじフェスは来場者数万人規模のリアルイベントです。海外向けにはNIJISANJI ENが動いており、英語圏の配信者も同じ運営下に入っています。
現在は常設オーディションを停止中。VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)として候補生を募集する形式に切り替わりました。デビューまでの育成期間は他社より長くなります。
ホロライブ

カバー株式会社が運営する女性VTuberグループで、2016年6月設立。2023年3月に東証グロース市場へ上場しました。
JP/EN/ID/DEV_IS合計で70名以上が所属。宝鐘マリン・兎田ぺこら・星街すいせいなど、海外でも知られたタレントを抱えています。横浜アリーナ・さいたまスーパーアリーナでのライブ実施実績があり、ホロライブEnglishは英語圏向けの独立した展開で動いています。
応募条件は18歳以上の日本居住者・国籍と性別問わず・夢や目標がある方。全員女性のアイドル路線で、配信内容にもルールが置かれています。
ホロスターズ

カバー株式会社の男性VTuber部門で、ホロライブの姉妹グループにあたります。2019年6月活動開始。日本メンバーと英語圏のメンバーを合わせて20名以上が所属しています。
夕刻ロベル・アステル・レダ・律可などが在籍し、配信からゲーム・歌まで幅広いジャンルで動いています。ホロライブとの合同イベントが定期的に開催されており、男性VTuber事務所の中では技術基盤が整っている部類です。
男性で配信規模を広げたい応募者の場合、ホロライブ本体のリスナー層から流入が見込めます。他の男性事務所との違いです。
ぶいすぽっ!

株式会社バーチャルエンターテイメントが運営し、設立は2018年。2026年3月時点で25名のVTuberが所属しています。
橘ひなの・胡桃のあ・小森めとが看板で、FPS・バトルロイヤル系ゲームの配信が中心です。VTuber最協決定戦(PUBG・Apex Legends・VALORANT)で優勝経験があり、有明アリーナで大型eスポーツイベントも開催しました。
プロチームと合同で大会出場・メディアミックス展開を進めており、活動の方向性はeスポーツに寄っています。
ななしいんく

774 inc.が運営する事務所で、設立は2018年。途中で全所属グループ・タレントを統合する大きな再編がありました。
因幡はねる・西園寺メアリ・龍ヶ崎リンなどが所属し、ミュージック / バラエティ / ゲーミングの各ジャンルにタレントを配置しています。アイドル路線と芸人路線を併せ持つ運営スタイルで、事務所とタレントの距離感が近く、スタッフとの関係性も良好だと評価されています。
ジャンル区分が3つに分かれている分、応募時に自分の強みをどの枠に当てに行くかが見えやすくなります。
Neo-Porte

株式会社Neo-Porte(Brave group経営統合)が運営し、活動歴は5年目。0期生から7期生まで計22名のタレントが所属しています。
YouTube・Twitch合計のチャンネル登録者数は400万人超。プロデューサー陣に渋谷ハル・Crazy Raccoon・まふまふ・そらるが第一線で関わっており、VTuber最協決定戦の運営側にも入っています。ゲーム配信・eスポーツ寄りのコネクションが強い事務所です。
約2年ぶりにオーディションを再開しました。
あおぎり高校

株式会社viviON(ゲオホールディングス完全子会社)が運営しています。2025年10月にTOKYO MXで初の地上波冠番組を放送開始。REALITY株式会社と共同で次世代VTuber発掘・育成オーディションも開催しています。
音霊魂子・栗駒こまる・大代真白などが所属し、高校設定・学園的な雰囲気で配信を進めています。YouTube上のショート動画で高い再生数を出しており、地上波・ショート動画・オーディションを並行で動かしています。
のりプロ

株式会社のりプロが運営する事務所で、設立は2019年。2025年7月時点で17名のタレントが所属しています。
プロデューサー自身がクリエイターという点が他社と違います。佃煮のりお(プロデューサー兼漫画家・犬山たまき)が中心で、犬山たまき・瀬兎一也・字ぴろぱるなどが所属。イベント企画・グッズ販売・音楽制作を内製しています。
.LIVE

株式会社アップランドが運営する老舗事務所で、ぶいぱい合流を経て、現在は30名超まで成長しました。
電脳少女シロ・もこ田めめめ・花京院ちえりなど、VTuber黎明期から活動を続けるタレントが在籍しています。.LIVE / ぶいぱいの2軸で運営されており、清潔感寄りのキャラクターイメージと長期活動者の多さが他社との違いです。
神椿

株式会社THINKR(KAMITSUBAKI STUDIO)が運営する事務所で、ぴあアリーナMMで大型ワンマンライブを開催しています。
花譜・理芽・春猿火が看板で、Spotify・Apple Musicでの楽曲配信を進めています。事務所というより音楽レーベルに近い動き方で、配信頻度よりも楽曲リリースとライブを中心に運営しています。ゲーム配信やバラエティ系の活動は前提に入っていません。
Re:AcT

株式会社mikaiが運営する事務所。直近で経営陣交代があり、新体制で動いています。
獅子神レオナ・花鋏キョウ・天川はのなどが所属。Re:AcT Gaming(女性配信者向けゲームプロジェクト)を展開し、Twitchでのゲーム配信に注力しています。タレントごとに個別の活動方針を設計しており、グループ単位で揃えた展開は取りません。
RIOT MUSIC

株式会社RIOT MUSIC(Brave groupからスピンオフ)が運営し、2022年7月設立。
凪原涼菜・松永依織・神崎茜などが所属し、音楽活動に集中できる環境が整えられています。RIONECTION(既存VTuberサポートプロジェクト)には参加VTuber 25名が登録されており、VSingerレーベルとサポートプロジェクトを並行で運営しています。
Palette Project

ENILIS Inc. / jig.jpの共同運営で、2019年9月設立。jig.jpとENILIS共同運営体制への移行が直近で完了しました。
七海ロナ・暁月クララ・藤宮ことはなど、歌・ダンス中心のバーチャルアイドルグループとして活動しています。運営体制変更直後のため、初期メンバーポジションが空いている段階にあります。
VOMS project

GYARI(ココアシガレットP)が個人プロデュースする事務所で、2019年9月設立。2023年10月に新メンバー3名が加入しました。
緋笠トモシカ・羽渦ミウネル・大門地リューゴンなどが所属。企業運営ではなく個人プロデュースという形で動いており、GYARIが楽曲提供・デザイン監修まで関与しています。楽曲・キャラクター造形の統一感は、この体制から出ています。
法人運営の大手と比べると規模は小さく、企画・運営の意思決定は個人ベースで進みます。
Balus

バルス株式会社(Balus CO., LTD.)が運営し、2017年設立。
銀河アリス・MonsterZ MATE・夜子・バーバンクなどが所属しています。SPWN(有料配信プラットフォーム)を自社で持ち、VR/AR/3DCGを使ったコンテンツ制作と事務所運営を兼ねています。
XRライブ事業で3D演出を内製しているため、3Dライブ・XRイベントを中心に活動したい応募者には他社にない選択肢になります。
Razzプロダクション

IRIAM特化のVライバー事務所で、2021年2月設立。設立から累計1500名以上のVライバーをサポートしてきました。
運営は株式会社BET(アスカネット関連・東証グロース市場上場企業)。応募条件は16歳以上の男女・月10日以上かつ合計30時間以上の配信。16歳以上から応募可能(未成年は親権者同意)で、YouTube系の大手より間口が広めに作られています。
デビュー時のイラスト無償提供、デビュー前講習会、配信ノウハウ資料、運営との面談まで、オンラインサポートが揃っています。
Kalanプロダクション

株式会社BET(Razz姉妹事務所)が運営する男性キャラクター専門のVライバー事務所で、2025年6月設立。
設計上の最大の違いは報酬の還元率100%(事務所マージン0%)です。応募条件は16歳以上・月15日以上かつ月間50時間以上の配信。配信時間の下限はRazzより厳しめですが、月間配信実績に応じたボーナス報酬制度も用意されています。
対応アプリはIRIAM。Razzの配信ノウハウを姉妹事務所として継承しています。男性キャラクター専門でIRIAM配信を扱う事務所は他社にほぼありません。
Lapis Live

IRIAM専門のVライバー事務所で、2021年8月設立。2025年3月時点で400名以上のタレントが活動中です。
運営は株式会社Lapis Live(AI Inc.子会社)。応募条件は月40〜50時間以上の配信を半年間継続で、Razzより配信ノルマが重めに置かれています。
イラスト無償提供、チャットサポートの常時利用、法務顧問・税理士のスタッフ在籍まで、サポート体制が事務所運営側に揃えられています。
VTuber事務所に所属するメリット
個人勢としてVTuberを始めると、ガワ制作・動画編集・企画・事務処理を全て自分でこなすか外注で進めることになります。とにかく金がかかります。事務所所属では、機材とアバター制作、案件と営業、トラブル対応、ファンベースまで運営側が引き受けます。
機材とアバター制作を事務所が用意してくれる
個人勢でVTuber活動を始めようとすると、Live2D・3Dモデルの制作費、高性能PC・カメラ・マイクの配信機材、デザイナーへの立ち絵発注まで、すべて自前で揃えます。動画編集ソフトの操作や配信ソフトのセッティングもひとりで覚える必要があります(VTuberの仕組みとは?アバターが動く技術をわかりやすく解説 で技術構成の全体像を確認できます)。
ガワ・動画編集・企画・事務処理を全部ひとりで背負います。とにかく金がかかります。
事務所所属になると、この初期投資の前提が変わります。配信環境さえ整っていれば、必要な機材も立ち絵もアバターも運営側が用意します。
なかでもIRIAM特化のVライバー事務所では、Razzプロダクション・Lapis Live・Kalanプロダクションがデビュー時のイラスト無償提供を打ち出しています。立ち絵代を負担せずにデビュー枠に入れるのは、応募者の手元に残る金額に直接効きます。
案件・コラボ・営業ノウハウが流れてくる
個人勢の場合、企業タイアップ広告は自分で営業先を探し、提案資料を作り、契約条件もひとりで詰めます。配信の準備時間と、案件を取りに動く時間を毎日のように奪い合います。
事務所所属では、企業タイアップ広告の窓口が運営側にまとまります。事務所所属VTuberに案件が優先的に回るルートが業界にあり、応募者は配信の準備に時間を使えます。
同じ事務所のライバーとのコラボもしやすく、コラボ相手のリスナーを自分のチャンネルに呼び込めます。事務所内コラボは運営が日程と内容を調整するので、個人勢のように毎回ゼロから企画を組まずに済みます。
トラブル対応・契約交渉を任せられる
個人勢で活動を続けると、応募者本人の連絡先や住所がどこかで漏れます。連絡先からストーカー被害につながった事例も実在しますし、炎上したときの一次対応もすべて自分で抱えます。
事務所所属なら、ファンレターや贈り物の送付先は事務所が管理します。応募者本人の住所を出さずに済み、炎上時の対応窓口にも事務所が入ります。
契約交渉も同じです。Lapis Live は法務顧問・税理士もスタッフとして在籍する体制を公開しており、企業との契約交渉や税務処理を運営に任せられます。顧問弁護士を抱える事務所であれば、配信中に発生したトラブルの法的対応も運営側がまず受け止めます。
ファンベースが先輩ライバーから流れてくる
個人勢の初配信は同接ゼロから始まります。チャンネル登録者数を自力で1から積む期間がデビュー後の数ヶ月から半年に及ぶケースも出てきます。
事務所所属の新人は条件が違います。デビュー前に事務所の公式アカウントで新メンバーを告知し、先輩ライバーが配信中で紹介する。初配信のサムネイルや告知文も運営側が組み、SNS運用まで支援します。
個人勢の初配信は同接ひと桁・登録者ゼロから動き出します。企業勢の初配信は同接数千人・登録者数万人スタート。デビュー直後の活動量と案件オファーは、この初動の数字差から大きく変わります。
VTuber事務所のデメリット
事務所所属には、応募者が手取りや権利で損をしやすい論点があります。配信頻度のノルマ、収益分配、退所時のアバター権利、そして詐欺オーディション。最後の論点は競合上位の記事でほとんど扱われていません。本文後半で面接の流れから契約圧力までの全体像を見ます。
活動の自由度と配信頻度の制限
VTuber事務所、とくにVライバー特化の事務所では、所属条件に「月◯日以上・月◯時間以上」の配信下限が置かれているケースが多いです。
応募要項に並んでいる数字を見ると、Razzプロダクションは月10日以上・合計30時間以上、Kalanプロダクションは月15日以上の配信が条件。Spiceは半年継続、PIKAプロダクションは週6日以上、bondliveも週4〜5日のペースが求められます。学業や本業の合間に配信する想定だと、週4〜5日のラインはかなり重い負担です。
配信時間の縛りだけではありません。事務所カラーに合わせた発言やキャラ設定の調整も入ります。創作の方向性や表現方法で個人の意見が通らない場面も出てきます。配信頻度と表現の両面で、事務所の枠にはまる前提での契約です。
収益分配で手取りが減る
事務所所属の最大のトレードオフは、収益の何割かを事務所に分配する点です。
個人勢ならスーパーチャットも案件報酬も全額が自分のもの。事務所所属だと、契約内容に応じて数十%が事務所取り分として差し引かれます。分配率は契約ごとに違うので、同じ案件でも手元に残る金額は事務所によって変わります。
還元率は事務所ごとにバラつきが大きいです。Kalanプロダクションは報酬の還元率100%(事務所マージン0%)を打ち出していますし、PIKAプロダクションのように月間報酬制(トップで月50万円近く)を採用するところもあります。応募前に契約書の分配条項を読み、自分の想定配信時間で手元にいくら残るかを試算してください。契約後に気づくと、戻れません。
退所時にアバターを持ち出せない
事務所を辞めるとき、自分の顔として使ってきたアバターを持ち出せない。これがVTuberという仕事に固有の最大の落とし穴です。
事務所を卒業・解雇された場合、2Dや3Dモデルのガワは事務所側に残ります。アバターの著作権・利用権が事務所側にある契約だと、退所と同時に見た目もキャラ名もリセット。応募者は別人として再スタートを切ります。
例外もあります。元ななしいんく所属の周防パトラは、会社との協議の末にアーカイブを引き継ぎ、ガワをローンで買い取ってフリー転身しました。ただ、参考にできる前例ではありません。
餅月ひまり(元ライヴラリ)のように事務所への不信感から突然卒業したケースでは、アバターを残したまま活動歴ごと切り離して離脱しました。契約前にアバター権利の帰属、退所時の譲渡可否、買い取り条件を、契約書で確認しておきます。
悪質事務所・詐欺オーディションへの警戒
VTuber事務所のオーディションには、応募者から金を引き出すことを目的とした詐欺型が混じっています。応募段階で見抜けないと、契約後にレッスン料・授業料の名目で数十万円規模の請求が続きます。
「未経験大歓迎」と書かれた1期生募集に応募すると、一次面接で職業・年収・貯蓄額・自由に使える金額を順に聞かれます。二次面接で「経験が無いとどこの事務所にも受からない」と言われ、代わりに「VTuber検定」という研修を勧められます。料金は2年で約40万円。最後に「今日中に契約しなければこの話は無かった事にする」と急かされて契約を迫られる。これが詐欺型の典型です。
VTuber検定という資格はありません。正規のVTuber事務所が応募者から契約金や授業料を取ることもありません。「他では受からない、すぐに契約しろ」と急かす事務所、面接で経済力を聞いてくる事務所は、応募候補から外します。
事務所自体が消える事例もあります。
usabit.・ZERO Project・AVATAR 2.0 Project は活動停止に追い込まれました。代表取締役社長が失踪したまま運営が止まった事務所もあります。事務所が消えると所属タレントはアバターと活動歴を抱えたまま、行き場をなくします。応募前に運営会社の登記情報・代表者氏名を確認しておけば、こうした事務所は事前に外せます。
権利や規約がきちんとしていない事務所は怪しい、というのが業界共通の目安です。応募段階で契約書を見せてくれない、契約金や授業料を要求してくる、即日契約を求めてくる。このうちひとつでも当てはまる事務所は、応募候補から除外します。
VTuber事務所のオーディション応募手順
応募者が実際に詰まるのは、応募フォームを送るときではなく、書類が通った後の確認と判断のタイミングです。情報の出ていない事務所ほど、応募者の手元に残る材料が少なくなります。
オーディション情報の探し方
オーディション情報は公式サイト、事務所公式X(旧Twitter)、VTuberオーディション情報サイトの3か所に分かれて出ます。
ただし大手2社のにじさんじとホロライブは、現在常設オーディションを停止中です。にじさんじはVTA(バーチャル・タレント・アカデミー)として候補生を募集する形式に切り替わっており、ホロライブも告知のタイミングが限られます。大手と中堅の事務所はそもそも常にオーディションを開催していないので、定期的に公式サイトを確認しに行く必要があります。
一方、中堅・IRIAM特化の事務所は応募フォームを常時公開しているところが多く、思い立った日に応募できます。Razzプロダクション・Lapis Live・Kalanプロダクションあたりが該当します。
応募から所属までの流れ
応募の入り口は、ほぼ全事務所で応募フォームの入力です。ハンドルネーム・年齢・希望ジャンル・自己紹介を埋めます。デモ配信やボイス録音の提出を求められる事務所もあります。
書類審査が通ると、Zoomでのオンライン面談に進みます。事務所側からは応募動機・配信頻度・希望ジャンルを聞かれます。応募者側から契約条件を確認できるのもこの面談だけです。面談の場で確認していなければ後から戻れません。
合格後は、Live2Dモデルなどキャラクター設定とアバター制作、配信機材の準備に入ります。OBS Studio・XSplitといった配信ソフトの導入や、マイク・PCの動作確認が並行で進みます。最後に自己紹介配信を行ってデビューします。
所属前に必ず確認すべき5項目
1期生募集のように口コミが出回っていない事務所は、応募者の手元に残る材料が極端に少なくなります。オンライン面談で確認しなければ、契約後に書面で残らない条件が出ます。面談前に確認項目を5つメモにしておきます。
- ① 病気などやむを得ない事情で辞めるときに、お金がかかるか
違約金条項・最低活動期間・退所申請の手順を、契約書面で文言として確認します。違約金条項が空欄かどうかで、やめるときに金がかかる事務所か判別できます。
- ② 立ち絵代を誰が負担するか
立ち絵の料金は事務所が負担するのが業界の通例です。応募者負担を提示してくる事務所は、他社の契約条件から外れています。面談で誰が支払うかを聞きます。
- ③ 給料の締め日と支払日
配信報酬の集計期間と振込タイミングが書面で示されない事務所は、後でトラブルになりやすいです。いつ締めで、いつ振り込まれるのかを文言で出してもらいます。
- ④ 権利規約の整備状況
権利や規約がきちんとしていない事務所は怪しい、というのが業界共通の目安です。アバター(ガワ)の権利、退所時の扱い、配信アーカイブの帰属を、契約書の条文単位で確認します。
- ⑤ 代表者の名前を検索する
代表者氏名・運営会社の登記情報を検索し、過去の事業歴・SNS発言・関連会社の評判を確認します。法人格や所在地が出てこない事務所は、応募者が後から取り戻せる材料が少なくなります。
口コミがない1期生の募集でも、5項目の答えが書面で揃えば、応募者は契約後の条件をあらかじめ確認した状態で署名できます。
まとめ
VTuber事務所選びは、所属タレントの人気や事務所のブランドではなく、契約条件レベルで決めるほうが後悔が少なくなります。配信ノルマ(月◯日・◯時間)、収益分配率、退所時のアバター権利、契約金や授業料の有無を、面談時に必ず確認してください。
「他では受からない、すぐに契約しろ」と急かす事務所や、VTuber検定のような実在しない講座で受講料を取る事務所は避けて構いません。契約金がないと受からない一般事務所はありません。
大手のにじさんじ・ホロライブは常設オーディションが停止しています。まずは中堅エンタメ系(ぶいすぽっ!・ななしいんく・あおぎり高校)か、Vライバー特化(Razzプロダクション・Lapis Live・Kalanプロダクション)から比較するルートになります。個人勢としてIRIAMで実績を積み、事務所のスカウトを待つ段階的な選択肢もあります。
VTuber業界にキャリアとして関わることに関心があるなら、配信者ではなくスタッフやマネージャーとして事務所を支える道もあります。事務所側の仕事内容や職種は VTuberスタッフとは?仕事内容・職種・年収・なり方を解説 と VTuber事務所のスタッフ就職は難しい?難易度の実態と職種別のチャンスを解説 で詳しくまとめています。