業界研究

ミュージシャンはやめとけ?続ける・兼業・見切りの判断軸を解説

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バンドや弾き語りで活動しながら、このまま続けていていいのかと迷うのは当然です。やめとけと言われる理由には、収入の問題・業界の構造・決断のタイミングという、演者として直面する現実が重なっています。

演奏の仕事だけで生活費に届かない人が大半で、厚労省の職業統計に演者の賃金欄がないのも同じ理由からです。音楽配信市場は拡大していますが、その増収が演者個人の手取りに届くわけではありません。

年齢・収入・手応えを自分の現在地と照らし合わせると、専業を続ける・兼業に切り替える・見切るという三択のどこに立っているかが判断できます。見切りを選んでも、演者として積んだ現場経験は音楽関連職への転職に活きます。

この記事の内容
  1. ミュージシャンはやめとけと言われる本当の理由
    1. 演奏の仕事だけでは生活費に届かない
    2. 市場が伸びても演者の手取りには回ってこない
    3. 早くデビューしたい焦りにつけ込む手口がある
    4. 名の知れたバンドでも家族を養えず脱退する現実
    5. 売れるほど作りたい曲を作れなくなる逆説
  2. やめとけはどこまで当たっているのか
    1. 一般職と兼業のまま国内外で評価された人たちがいる
    2. 仕事の収入があるほど好きな音楽で勝負できる
    3. 個人で発信も制作も完結できる時代になった
  3. 続けるか見切るかの分かれ目
    1. まずプロになりたいのか音楽を続けたいのかを分ける
    2. 見切りの目安は年齢・収入・手応えで測る
    3. 決断を先延ばすほど辞めるコストが上がる
  4. 兼業ミュージシャンとして活動を続ける現実的なやり方
    1. 平日の夜と週末に活動を残せる仕事を選ぶ
    2. 機材とスタジオの負担は固定収入で受け止める
    3. やらないことを決めて時間をつくる
  5. 音楽を仕事の中心から外したあとの選択肢
    1. 演者の経験が活きる音楽関連の仕事
    2. 転職市場での演者経験の生かし方
  6. よくある質問
    1. 30代からミュージシャンを目指すのは遅いですか
    2. 兼業のまま本当に音楽で評価されますか
    3. 音楽で食べていけないと感じたら何から動くべきですか
    4. 辞めると決めた後、最初にやることは何ですか
  7. まとめ|やめとけかどうかは、あなたがどこにいるかで決まる

ミュージシャンはやめとけと言われる本当の理由

厚労省のjobtag(職業情報提供サイト)で「音楽家」を引いても、演者本人の賃金統計は出てきません。代わりに並ぶのは音楽教室講師・録音エンジニア・ピアノ調律師という周辺職です。バンドや弾き語りで人前に立つ側の収入は、国がまとめる職業データにそもそも欄として用意されていません。やめとけと言われる理由は、その不在から順にたどれます。

演奏の仕事だけでは生活費に届かない

集計サイトをいくつか並べると、ミュージシャンの年収は副業を含めて100〜300万円程度に収まる例が多いと言われます。メジャーデビューしても月収10万円ほどに留まったという例も挙がります。これらは一次統計ではないため範囲として受け取る数字ですが、上下の幅は極端で、初めからずっと収入のない人もいます。

jobtagに演者の賃金欄がないのも、雇用形態の問題から来ています。賃金欄はないですが、職業概要欄には演奏の仕事だけでは生活が成り立たず、副業やアルバイトで食いつないでいる人もいるという説明が記されていました。雇用されて月給をもらう職ではないので、平均年収という形に数字がまとまりません。だから国の統計で音楽家を引くと、講師や調律師という音楽で雇われている側のほうが表に出てきます。

やめとけと言われる理由のうち、レーベルや事務所側の構造的な問題は音楽業界はやめとけと言われる理由は?実態と向いている人の特徴を解説で別に扱っています。ここでは演者本人の収入に絞ります。

市場が伸びても演者の手取りには回ってこない

2024年の音楽配信売上は1,233億円。前年比106%で、11年連続のプラスです。うちストリーミングが1,132億円、シェア91.8%を占めます。

ライブ市場も7,605億円で過去最高を更新しました。数字だけ見れば、音楽が稼げない時代だとは思えません。

ところが、この伸びが演者本人の手取りに届くとは限りません。ストリーミングは1再生あたりの分配がごく薄く、版権や原盤を握る側へ収益が寄ります。市場の拡大と、舞台に立つ人の口座に入る額は、別々の動きです。配信が過去最高を更新した年でも、演奏で食えない人が周辺職へ流れる流れは変わりません。

早くデビューしたい焦りにつけ込む手口がある

都内に、オリコン1位を取った作曲家が直接指導すると謳う音楽教室がありました。経営しているのは、その教室と同じ音楽事務所。好成績なら事務所所属のアーティストになれると匂わせて、生徒を集めます。

体験レッスンでは最初から楽曲を持ち上げられ、業界で通用するようになると太鼓判を押されました。少しでも業界のパイプを持ちたい、早くデビューしたいという気持ちが勝って、入会の手続きをしてしまう人もいます。

入ってみると、古株の生徒が業界人の機材運びや雑用をこなしていました。たとえば傘を1本貸しただけで、その古株が業界人に激しく叱責される場面に出くわします。早く前に出たい焦りが向かった先は、こうした雑用と叱責の側でした。

名の知れたバンドでも家族を養えず脱退する現実

知名度のあるバンドのメンバーでも、家族が増えたタイミングで音楽の側を手放す例があります。第二子ができたことを理由に、グループを離れたケースです。テレビやネットで流行り、名の知れた存在になっても、その収入で子どもを含めた家族を支えきれるとは限りません。売れて名前が通ったことと、その名前で生活費が立つことは、別々に動きます。

知名度は、養える保証になりません。

たとえばクリープハイプには『バイト バイト バイト』という曲があります。売れずにバイトで食いつなぐバンドのきつさを描いた一曲です。デビュー前の話に聞こえるかもしれません。

ところが家族を養う段になれば、知名度がついた後でも同じ焦りが戻ってきます。細々と続ける人ほど、ステージの収入だけでは足りず、別の仕事で食いつなぐ形に近づきます。

売れるほど作りたい曲を作れなくなる逆説

売れたアーティストほど、作りたい曲を自由に作れなくなります。商業の規模が大きくなれば、関わる人も、食わせなければならないスタッフの数も増えていきます。売り上げを立てる責任が重くなる分、確実にこのぐらいは稼げる、という範囲の中でしか動けません。攻めた曲を出さなくなった、と言われるアーティストの多くは、ここに縛られています。

むしろ音楽性だけで言えば、本業を別に持っている人の方が自由です。生活が別で回っていれば、売れ線から外れた曲を作っても暮らしは崩れません。

やめとけはどこまで当たっているのか

あぶらだこは1983年に結成され、パンクやハードコア、マスロックに分類される音楽性で国内外から評価を集めてきました。メンバーは全員、一般職と兼業のまま活動を続けています。働きながらずっと音楽を作り、それでも国の内外で名前が知られています。やめとけと言われる理由は概ね当たっていますが、全部捨てなければデビューも評価もできないという前提のほうは外れています。

一般職と兼業のまま国内外で評価された人たちがいる

働きながら音楽で評価された例は、あぶらだこにとどまりません。海外を見ても、デビュー前にフルタイムで働いていた著名なミュージシャンがいます。

オアシスのノエル・ギャラガーは、フルタイムで働いている最中に仕事で怪我をし、そこから楽な仕事へ移りました。空いた時間にせっせと書きためた曲を、弟がやっていたバンドで披露し、その主導権を握って大きく当てます。ポリスのスティングは教師をしながらデビューし、日本ではケン・イシイが電通勤務のまま活動を続けていました。勤め人を経てデビューした顔ぶれは国内外に広がります。

全部を手放してから出発するという前提は、こうした実例の前では当てはまりません。

仕事の収入があるほど好きな音楽で勝負できる

バイトで生活費を稼ぎ、その上で機材代とスタジオ代まで捻出します。三つの出費を同時に背負って食いつなぐと、ある程度お金になる音楽性を狙わざるを得ない焦りが常につきまといます。売れなければどうしようもない、というあせりはハンパではありません。

一方、就職して生活の土台が固まれば、生活費に困らないうえ、節約して浮いたお金で機材を買い足せます。お金の出どころに追われていたころは、売れ筋を外す冒険などしにくいものでした。収入が安定するほど、時間さえ取れれば好きな音を好きに作る余地は広がっていきます。

個人で発信も制作も完結できる時代になった

かつて多くの人に音楽を届けるには、事務所に所属するかレコード会社の力を借りる必要がありました。今は録音から流通まで、個人の手元で完結します。

制作の側では、パソコンや、場合によってはスマホ1台でプロ水準の録音まで届くようになりました。iPhoneだけで楽曲を作り上げたスティーヴ・レイシーのような例もあります。

流通の側では、SpotifyやApple Musicといったサブスク配信、デジタル音源販売の契約を結べば、CDの製造も在庫を抱えるリスクもいりません。個人が世界中の聴き手へ自分の曲を直接届けるのに、もう大きな組織の力は要らなくなりました。

続けるか見切るかの分かれ目

「やめとけ」と言われる理由の大半は当たっています。それでも全部を捨てる必要はない、という相反する2つはどちらも残ります。続けるか見切るかの答えは一つではなく、自分の現在地によって変わります。では何が現在地を測る物差しになるのか、順に見ていきます。

まずプロになりたいのか音楽を続けたいのかを分ける

プロのミュージシャンとして食べていくのが目的なのか、音楽を続けて楽しむのが目的なのか。同じ「やめとけ」を受け取っても、ここで道が分かれます。

0か100かで考える必要はありません。仕事を辞めなくてもできることはあります。コンテストやオーディションに応募する、ボイストレーニングに通う、休日にライブハウスで演奏する——プロを最終目標に置いても、最初の一歩は誰でも踏めます。

見切りの目安は年齢・収入・手応えで測る

何を見て判断すればいいのか、手がかりになるのは3つです。

  • 年齢: 30歳前後という区切りが繰り返し語られてきました。10代の頃と違い、同年代でバンドを組んでくれる人を探すのも難しくなります。30歳までと期限を切って、そこまでに何が起きたかで判断します。この区切りは「専業を続けるかどうか」を考える目安です。30代からミュージシャンを目指すことの遅早とは切り分けて考えます。
  • 収入: 貯金を取り崩しているかどうかが境目になります。仕事を辞めてバイトに切り替えても、夢に向かいながら貯金を食いつぶす生活は変わりません。
  • 手応え: 第三者の本気の反応で測ります。お世辞ではなく褒められる歌や曲かどうか。

3つ全部がグレーなら、辞めるのでも専業でもなく、仕事を続けながら演奏を続ける兼業が残ります。

決断を先延ばすほど辞めるコストが上がる

先延ばすほど、辞めるときのコストは膨らみます。何年もずるずる引き延ばした末に、疲弊しきって音楽活動を辞めてしまいます。

買い揃えた機材、バンド内での立場、活動の中で育てた友人関係。続けてきた年数が長いほど、手放すときの痛みは大きくなります。逆に、向き合うのが早ければ失うものは少なくて済みます。

兼業ミュージシャンとして活動を続ける現実的なやり方

仕事を持ちながら演奏を続ける人は、週2日の休みを確保できる仕事に就き、やらないことを絞って空いた時間を活動に回しています。専業か断念かの二択で考える前に、生活の土台を残したまま続けるための手の打ち方があります。

平日の夜と週末に活動を残せる仕事を選ぶ

どの会社に入るか、どの業界で働くかで、活動を続けられるかが大きく分かれます。週2日の休みがきちんと取れて、平日も家に帰ってから音源づくりやスタジオに使える仕事が前提になります。残業で夜が潰れる職場では、楽器を触る前に一日が終わります。

フルタイムで働きながら活動している演者はいます。いま全く時間が取れないなら、働く時間を減らせる職場へ移ることで活動の時間を確保できます。

機材とスタジオの負担は固定収入で受け止める

機材代やスタジオ代を、その月の手元の現金から捻出するか、毎月決まって入る給料の一部から計画的に積むか。受け止め方がここで変わります。

固定収入があれば、ギターやインターフェース、月のスタジオ代を、生活を削らずに月々の投資として組み込めます。来月いくら入るか読めるので、半年後にこの機材を買うといった見通しも立てられます。一方、収入が読めないままだと、欲しい機材があっても、買う判断が常に生活費との綱引きから抜けられません。

やらないことを決めて時間をつくる

本気で活動の時間を増やすなら、増やす前にまず削るものを洗い出します。

ソシャゲをやらない。テレビを見ない。一日の使い方を振り返り、なんとなく流していた時間を音源づくりやスタジオに振り替えます。仕事の後に残る数時間は、何を捨てるかを先に絞った人のところにしか残りません。

音楽を仕事の中心から外したあとの選択肢

楽器を弾けること、ライブの段取りを回せること、音源を締切に合わせて仕上げてきたこと。演奏や現場で積み上げたものは、音楽を専業から外しても消えません。専業か断念かの二択で考えると見落としますが、その手前に音楽と地続きの仕事がいくつもあります。

演者の経験が活きる音楽関連の仕事

演者の現場感覚がそのまま通じる仕事は、音楽の周辺に広がっています。

入口になりやすいのは、音楽の制作、アーティストマネジメント、ライブ・イベント運営、音響・楽器系、音楽教室といった領域です。ステージに立ってきた人なら、本番の段取りや機材まわりの勘所が体に入っています。リハの進め方や転換の早さ、音響との詰め方も同じです。

曲を作ってきた人なら、制作の進み方や音の良し悪しが感覚で分かります。楽器を教える側に回れば、演奏で身につけた基礎がそのまま教材になります。どんな職種があるかは音楽業界にはどんな職種がある?5つの領域別に仕事内容と年収をわかりやすく解説で詳しく紹介しています。

ただし、同じ音楽の周辺でも演奏とは別の実務が中心です。未経験扱いで入る職種がほとんどです。

転職市場での演者経験の生かし方

ライブ現場の段取りを回してきた人は、イベント運営や制作の選考で現場感覚の強みとして見られます。音源を納期に合わせて仕上げてきた経験は、制作職の進行管理として通じます。メンバーやスタッフと折衝しながら活動を続けた経験は、チームでの調整力として面接に出ます。楽器演奏や音楽理論の知識は、音響・楽器系や音楽教室の仕事で直接使えます。

もっとも、こうした経験を選考の言葉に置き換えられなければ、ただの趣味として流されて終わります。現場で何をどう回してきたかを実務の言葉で並べられるかどうかが、選考の分かれ目になります。

音楽の経験を使える転職の進め方と職種別の選び方は、次の記事で確認できます。

> ▶ 【2026年版】音楽業界に強い転職エージェントおすすめ7選!職種別の選び方も解説

よくある質問

30代からミュージシャンを目指すのは遅いですか

遅い・遅くないの一律の答えはなく、目指す形によって変わります。

プロとして食べることを目指すなら、仕事と兼業のまま活動を始める方が持続しやすく、年齢よりも「活動の時間を確保できる仕事かどうか」が先に問われます。

兼業のまま本当に音楽で評価されますか

評価されます。兼業の状態でも、発表・流通・ライブの全てを個人単位で完結できる環境が整っています。

ただし、評価を得るまでには活動を継続できる期間が必要で、生活の土台があることが長く続けるための前提になります。

音楽で食べていけないと感じたら何から動くべきですか

まず、演者として積んだ経験が音楽関連の仕事でそのまま通じるかを確認するところから始めます。

制作・マネジメント・イベント運営・音響といった職種は、未経験扱いでも現場感覚が選考で評価される入口があります。

演者経験から入りやすい職種と選考で評価されやすいポイントは、「演者の経験が活きる音楽関連の仕事」で詳しく触れています。

辞めると決めた後、最初にやることは何ですか

まず、演者として積んだ経験を棚卸しします。ライブの段取り・音源の制作管理・機材の選定といった実務を書き出し、それが音楽関連職の選考でどう言葉になるかを確認します。

その上で、制作・マネジメント・イベント運営・音響など、上の「演者の経験が活きる音楽関連の仕事」で挙げた職種のうち、自分の経験と重なる領域を1〜2つ絞ってから動くと、応募の焦点が定まります。

まとめ|やめとけかどうかは、あなたがどこにいるかで決まる

専業を続けるか・兼業に切り替えるか・見切るかは、30歳前後の年齢・貯金を取り崩しているかどうか・第三者の本気の反応、この3つを現在地として見ると判断しやすくなります。3つ全部がグレーなら兼業が残ります。見切りを選んでも、演者として積んだ経験は音楽関連の仕事で評価されます。

この3択は固定ではなく、時期によって変わります。兼業から始めて評価が積み上がれば、専業を再び検討できます。逆に専業に疲れたなら、兼業に戻ってから次の動きを考えても遅くありません。転職エージェントの選び方は上の「転職市場での演者経験の生かし方」セクション末のリンクから確認できます。

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