WEBTOONの仕事はきつい?着彩・線画のリアルな実態と向いている人を解説
着彩や線画のトライアルに受かったのに、一週間経っても二週間経っても仕事の連絡が来ない。合格したのだから次は発注の連絡が来るはずと待っているうちに、何かが違うと気づき始めます。
在宅クリエイターのトライアルに受かっても、それは企業の名簿に登録されただけです。単発の着彩案件を受けても、時短を工夫した結果が時給350円という数字に落ち着いた経験は実際に出ています。
合格しても仕事が来ない登録の構造、工程別のきつさの中身、着彩の実際の単価を確認していくと、参入するか撤退するかを自分で判断できる材料が揃います。
Webtoonの仕事がきついと言われる理由
毎週やってくる締め切りに、前話の修正対応と次回分の制作が重なって並行する。在宅で工程を請け負うクリエイターの自転車操業は、たしかにきつい部分があります。ただし、きつさの本丸は別のところにあります。
毎週70〜90コマを仕上げる締め切り密度
Webtoonの連載は週刊が基本です。1話あたり70〜90コマを、フルカラーで毎週仕上げていきます。
紙の漫画のような月刊・隔週のペースは通用しません。毎週の納品日に向けて手を動かし続けるうちに、前話の修正依頼が割り込み、次回分の制作も同時に進みます。電子書籍市場は2023年度で6,449億円まで伸び、配信本数も連載数も増え続けています。需要が拡大した分だけ、週単位で回り続ける現場のスピードは落ちません。
分業で同じ作業をずっと続ける単調さ
Webtoonの制作は完全分業制です。線画・着彩・背景・仕上げに担当が分かれ、1人が全工程を見ることはほとんどありません。
着彩に入れば、毎週ひたすら着彩だけを長時間続けます。影とハイライトを乗せ、色をパーツごとに当てていく。線画なら線、背景なら背景で、同じ単調な作業を来る週も来る週も繰り返すことになります。ところが、得意な1工程に集中できる点を価値と感じて続ける人もいて、向き不向きは大きく割れます。
きつさの本丸は労働時間ではなく仕事が来ないこと
本丸は、毎週の締め切りではありません。
合格しても声がかからない不安と、手を動かした割に合わない単価、この2つが効いてきます。在宅クリエイターのトライアルに受かっても、それは仕事の発注を意味しません。実際に、登録だけ済んで次の連絡が来ない期間が数ヶ月続く人は多数います。
さらに、単発で受けた着彩が時間あたりの報酬に直すと時給350円程度まで沈みます。締め切りの密度は数えられる負荷です。だから、覚悟して入れば耐えられます。
もっとも、声がかからない期間の不安は数えられません。次の依頼が来るかどうかが見えないまま待つ時間こそ、参入を迷う人が向き合う本丸。
各工程のきつさ
完全分業制で、着彩・線画・ネーム・編集アシスタントと工程ごとに担当が分かれます。一人で一作を仕上げる漫画とは違い、自分の請け負った工程だけをひたすら繰り返すのが在宅クリエイターの日常です。だからきつさの中身も工程によって変わります。工程によってきつさの種類がまったく異なります。
着彩は決められた色を塗り分け続ける
着彩は下請け会社から依頼を受注し、PhotoshopやClip Studioでパーツごとに決められた色を塗り分ける工程です。影とハイライトを乗せ、肌や髪には効果レイヤーが重なります。色トレスをして、ビャーっと塗って、細かい塗り残しを一つずつ埋めていきます。
作業そのものは難しくありません。とはいえ、塗り分けだけで全体の半分以上の時間が消えます。フキダシや描き文字の加工も来るため、手は止まりません。たとえば人物着彩は週20時間からの稼働が目安とされ、塗り続ける時間が一日の大半を占めます。
そして本人が一番こたえるのは、この作業が何の技術にもならないという感覚です。決められた色を決められた範囲に流すだけなので、自分の絵が上達する実感がありません。報酬は薄く学びにもならないという声は、単発の着彩案件に入ったクリエイターの複数から上がっています。
線画は原作のタッチに合わせ続ける
着彩が単調さとの戦いなら、線画は我慢との戦いです。キャラクターと背景を線で起こす工程ですが、ここで求められるのは自分の画風ではなく原作のタッチの再現です。
自分が描きたい線ではなく、原作者が決めた線に寄せ続けます。たとえば普段は太い線で描く人でも、原作が繊細な細線ならその細線で起こします。手癖を消して他人の絵柄をなぞる作業が一話ぶん続くため、絵が好きで入った人ほど自分を抑える負荷が重くのしかかります。稼働の目安も着彩より長く、週30時間から。
ネームは縦スクロールのテンポを計算する
ネームはコマ割りとセリフ配置を設計する工程です。紙の漫画と違い、Webtoonは縦に読ませる演出のインパクトを計算しながら組み立てます。
どこで間を空け、どこで一気にスクロールさせるか、読者の指の動きを想像しながらコマの高さとセリフの位置を決めていく頭脳労働です。塗りや線のように手を動かし続けるきつさとは違い、ここで削られるのは答えの見えない設計を延々と考え続ける集中力です。
編集アシスタントは突発的な修正に追われる
編集アシスタントのきつさは、自分のペースで進められない点に尽きます。セリフの流し込み、効果音の追加、画像の調整といった仕上げを担当しますが、編集者やディレクターからの赤字が予告なく飛んでくるのが日常です。
昨日終えたはずのページに、今日また修正指示が入ってきます。納期は動かないので、突発的な赤字を反映しながら締め切りに間に合わせ続けることになります。とはいえ、契約時に修正可能回数を確認しておかないと、際限なく直し続ける事態から抜け出せません。何度でも無料で直せる前提で発注してくる相手もいるため、回数の取り決めが効いてきます。
トライアルに受かっても仕事が来ない理由
着彩の単調さも修正ラウンドの多さも、実際に案件が手元にある人の話です。そもそも、トライアルに受かったというのは、企業に登録されたということでしかありません。仕事を任せられる技術があるクリエイターとして名前が控えられた、それだけです。合格の連絡と、実際に案件が回ってくることは、まったく別の話として動いています。
社内秘ランクと経験者優先で声がかからない
登録された人には社内秘のランクが付きます。Sランクは経験者として真っ先に声がかかる。AランクはSの空きが出たときに順番が回ってくる。そしてBランクは、登録者数を増やしたい企業側の都合で枠が作られた層で、実質的に案件が届くことはほとんどありません。
製作コストが高い上に週刊連載のため、スピードとクオリティが保証されている人にしか任せられません。だから案件は上のランクから順に埋まっていきます。Bランク以下に登録された人へ声がかかる可能性は限りなく低く、名簿に名前を残したまま何ヶ月も動かない人が出ます。
登録作家数を集めるだけの企業に注意
登録したのに、半年経っても声がかからないのはなぜでしょうか。
登録作家数を発注者へのアピール材料に使っている企業があります。実際に案件が回るのは一部の登録者だけで、残りは数のうちに含まれているだけです。なお、常に募集をかけている企業も同じ目で見たほうがいいでしょう。数打てば当たる戦法か、離職者が後を絶たないかのどちらかです。
合格は企業に登録されただけ
合格は、ただの登録の手続きにすぎません。
クリエイタートライアルの着彩部門に受かっても、二週間連絡が来ないまま放置される人がいます。もっとも、これは評価の低さが理由ではなく、枠の問題です。連載は開始から終了まで同じ担当者が作業を続けるため、新規の枠が空かない限り、登録者の出番が回ってきません。すでに動いている連載が終わるのを待つしかない人が、登録名簿には大勢並んでいます。
そのため、受かった瞬間に始まるのは案件の依頼ではなく、連載の枠が空くまで動かない順番待ちの行列が続きます。
着彩の報酬はいくらか
単発の着彩を請けて、取り消し操作を減らすなど時短を工夫しても時給が上がらなかった、という手応えが残ります。1話の額面だけ見れば悪くない数字も並びます。それを作業時間で割った瞬間に数字の重みが変わり、稼げるかどうかはここから先の時給換算で決まります。
単発着彩は時給換算350円まで落ちる
下請け会社からの受注で、単発の着彩案件が時給換算350円程度まで落ちた体験があります。
塗り分けだけで全体の半分の時間がかかった、という見積もりです。バケツと投げ縄ツールでパーツごとに色を入れ、細かい塗り残しを拾っていく。一つひとつは簡単でも、コマ数が積み上がると地味に時間を食います。時短のために取り消し操作を減らしても、最終的な時給換算は350円から動きませんでした。
そのため、報酬としても学びとしてもコスパが悪い、という単発仕事の手応えでした。
1話あたりの原稿料の相場
原稿料の相場だけ見れば、1話あたりの数字は決して小さくありません。LOCKER ROOM社の例では、着彩・仕上げや線画ともに99,000〜176,000円が1話あたりの原稿料です。
とはいえ、この額は1話分の総額です。LOCKER ROOMの条件では多数のコマを毎週こなすことが前提で、ソラジマでは着彩の単価が5,500円〜/ページ、1作品を担当して月収8〜25万円という幅が目安です。
同じ「1話いくら」でも、処理速度が遅ければ時給は崩れます。額面と手取り感のずれは、作業スピードがそのまま埋めるしかありません。
稼げるのは継続案件を持つ経験者だけ
大手の案件は報酬が高いです。それでも、その仕事が未経験者や実績の薄いクリエイターに回ってくることは、ほとんどありません。
報酬の良い仕事ほど、スピードとクオリティが読める相手に集まります。週刊連載の継続案件を1本持てて初めて月単位の収入が視野に入り、単発を拾い続けるだけでは、その水準には届きません。
月収8〜25万円が継続案件ありの目安
1作品を担当した場合の月収は、8〜25万円が一つの目安です。着彩なら5,500円/ページの単価を、毎週のコマ数ぶん積み上げていった先に立つ数字になります。
とはいえ、この幅に乗れるのは継続案件を持てた人です。継続が取れず単発のみで回している場合は月5万円以下になります。複数作品を同時に担当できる経験者でなければ、上限は見えにくいまま。
それでも続ける人・向いている人
決められた色をパーツごとに塗り分ける作業を、単調と感じるか、丁寧さを出せる場所と捉えるか。この感覚が、Webtoonの着彩や線画を続けられるかどうかを分けます。割に合わない単価と声がかからない登録の現実を踏まえてもなお請け負い続ける人には、共通する感覚があります。
紙の連載を目指す道については、漫画家はやめとけと言われる収入事情と比べると違いが見えてきます。
単調な塗り作業を割り切れる人
バケツと投げ縄ツールでパーツを塗り、色トレスをして、細かい塗り残しを一つずつ埋めていく。影とハイライトを乗せ、肌や髪には効果レイヤーが重なります。この流れを退屈な反復ではなく、集中できる時間として過ごせる人がいます。
たとえば同じ塗分け作業でも、めんどくさいだけで何の技術にもならないと感じる人もいれば、決められた色を指定通りに正確に仕上げること自体に手応えを覚える人もいます。自分の絵柄を前に出したい気持ちが強いほど、与えられた色設定をなぞる作業はストレスになりやすい。逆に、線の内側を塗り残しなく埋めきる精度に価値を置ける人は、長時間の塗り作業を苦にしません。
薄い報酬で同じ手を動かし続けられるかは、技術の高さより、この感覚の向き不向きで決まります。
経験を積んで継続案件を取りに行ける人
合格しても声がかからない登録の現実を踏まえると、続けられる人の動き方は限られてきます。報酬は低くても未経験歓迎の企業で実績を作り、週刊連載の現場を一度経験してから、経験者として評価される側に回る。この順番を最初から見据えて入る人が、登録のまま止まらずに案件を取り続けています。
もっとも、実績だけが評価軸ではありません。製作コストが高く週刊で回るスケジュールでは、スピードとクオリティが保証されている人にしか任せられません。だからこそ、依頼への返信が速く納期を守るというそれだけで、同じ実力帯の他のクリエイターより先に仕事が入ります。
薄い報酬と不安定な登録のなかで仕事を回し続けられるのは、塗りを割り切れて、なおかつ実績と信頼を自分で積み上げにいける人です。
エンタメ業界全体でクリエイター系の仕事を探している場合は、アニメ・ゲーム・動画配信など周辺業界の雇用状況も知っておくと判断材料が増えます。
▶ エンタメ業界はやめとけ←なぜ?理由や向いている人の特徴など解説!
Webtoon以外の選択肢も含めてエンタメ業界のクリエイター求人を探したい場合は、業界に強いエージェントに相談すると非公開の案件にもアクセスできます。
▶ 【2026年版】エンタメ業界に強い転職エージェントおすすめ11選!ジャンル別の選び方も解説
よくある質問
登録の構造や報酬の実態について、参入前に確認しておきたい疑問を取り上げます。
着彩のトライアルに合格したのに連絡が来ません。どうすればいいですか?
合格は「企業の登録名簿に載った」状態であり、連絡が来ない期間は珍しくありません。
もっとも、待つ理由は一種類ではありません。連載ごとに担当が固定される構造上、空き枠が出るまで待つしかないケースと、自分が低いランクに振り分けられていて実質声がかかりにくい状態にあるケースがあり、外からは区別できません。別の企業のトライアルを並行して受ける、あるいはエンタメ業界に詳しいエージェントに相談してWebtoon以外の在宅クリエイター案件も視野に入れることで、待ちの状態から動けます。
Webtoonの着彩で月いくら稼げますか?
着彩だけで安定した月収を得られるのは、週刊連載の継続案件を持てた人に限られます。
単発で案件を拾い続ける場合は、作業時間に対して手取りが薄くなりやすく、継続案件に入れてようやく月単位の収入が視野に入ります。スピードが上がるほど時給ベースでの収益は改善されますが、継続案件自体を得るまでの期間は収入が不安定なままになります。
Webtoonの仕事は未経験でも受けられますか?
未経験歓迎を掲げている企業は存在しますが、トライアルに合格してもすぐに案件が動き始めるとは限りません。
未経験で入る場合は、報酬より実績を優先して週刊連載の現場を一度経験することが、経験者として評価される側に移る最短の順番です。どの企業から始めるかで積める実績の内容が変わるため、エンタメ業界の転職支援に相談して選択肢を整理しておくと動きやすくなります。
トライアルに落ちた場合はどうなりますか?
落ちた場合、その企業への登録はできず、案件が回ってくることもありません。
ただし、合格ラインは企業ごとに異なり、ある企業で落ちた基準が別の企業でも同じとは限りません。落ちた理由が技術水準なのか、その企業の求めるスタイルとの不一致なのかは通知されないことがほとんどです。
Webtoonの仕事とアニメ業界の仕事、どちらがきついですか?
きつさの種類が違うため、単純に比べることは難しいです。
Webtoonの在宅着彩は「同じ工程を繰り返す単調さ」と「継続案件が取れるまでの不安定さ」が主なきつさです。一方、アニメの動画・仕上げ等の工程には、検査基準の厳しさや長時間の現場対応という別種の負荷があります。どちらが合うかは、在宅か現場か、単独作業か集団作業かという好みにも左右されます。
アニメ業界の実態を詳しく知りたい場合は、以下の記事が参考になります。
▶ アニメ業界はやめとけと言われる理由とは?向いている人の特徴など解説!
まとめ
Webtoonの仕事がきつい理由は、毎週の締め切り密度と分業の単調さだけではありません。トライアルに合格しても仕事が来ない登録の構造、単発着彩の時給換算の薄さ、この2点が参入前に確認すべき問題です。
Webtoon業界への転職・就職を検討している場合は、エンタメ業界の事情に詳しい転職エージェントに相談することで、非公開の求人情報や各社の労働条件の実態を把握しやすくなります。