制作進行のキャリアプランは?デスク・演出・異業種に進む条件を解説
担当話数を1本回せるようになった制作進行2〜3年目は、人に無理を頼み続ける疲れを感じながら、制作進行のキャリアプランをデスク・演出・他業界のどれで描くか決めかねています。
採用ページはデスクまで5〜8年を目安に挙げますが、順番が回るかは在籍年数で決まりません。同じ作品で上に座れる席はひとつしかなく、演出部のない会社では社内で待っても移り先がないためです。
手元の担当記録と社内で口に出した希望から、今どの分岐に立てるかが分かります。あと何年待つかでなく、次に何を積み誰に伝えるかで、続けるか移るかを判断できるようになります。
制作進行の仕事内容や年収の基準そのものを先に確かめたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
▶ アニメ制作進行とは?仕事内容や年収、絵が描けなくてもなれるのかを解説
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この記事の内容
制作進行として次のステップに進める目安
次のステップに進めるかどうかは、担当した話数の中身で決まります。プロダクション・アイジーの制作進行求人は、必要条件にアニメーション制作の進行管理経験を置き、歓迎条件に1話数を1人で納品まで担当できることを挙げています。募集の時点で、会社の側が線を引いている水準です。
1話を1人で納品まで回せたか
歓迎条件のこの一行が、最初の関門になります。
今のTVアニメは1話あたり300〜350カットです。この量を演出、作画、仕上げ、撮影へ渡し、リテイクを回収して納品まで届けたところまでが、1話数を1人で担当した状態です。
現に、2020年に新卒で入った制作進行は、最初の2年が劇場作品でした。その後にTVシリーズの第6話と第13話を持ち、放送作品を担当するに至っています。劇場作品だけのその期間を過ごした段階では、この一行にはまだ届いていません。
必要条件のほうは、アニメーション制作の進行管理経験とだけ書かれ、年数の指定はありません。在籍の長さではなく、話数を最後まで持った記録が数えられています。第6話、第13話という単位で自分の担当を答えられる人と、答えられない人が分かれます。
何本を同時に回しているか
新人のころの担当は1本だけだったのに、辞める時点では5本の作品を同時に回していた、という制作進行の退職エントリーがあります。
年数と本数は必ずしも一緒には増えません。担当1本のまま長く続ける人もいれば、短期間で5本に達する人もいます。
止まったカットの行方をすぐ答えられるか
デスクから、C100がずっと進行止まっているけれどどうなっているのか、と聞かれて即答できるでしょうか。
止まったカットの行方は、机の上の表ではなく頭の中にあります。手伝ってくれた人から、この素材は今どんな状況かと聞かれることがあります。すぐに答えられないなら、そのカットの状況を把握している人が誰もいない可能性が高いというサインです。
そのため、C100が今どこの誰の手元にあるかを、確認せずに言えるところまでが、1話を回し切った状態です。
制作進行から制作デスクに上がる条件

A-1 Picturesの新卒採用ページは、目安となる年数より早く昇進する例もあると書き添えています。会社の側は、その年数の手前でも、予算と社外窓口を任せられる状態に届いているかを見ています。
デスクの席は作品ごとに1つしかない
project No.9の制作デスク募集には、業務内容として制作進行の管理、そのあとに括弧書きで制作進行3〜4名と明記されています。この募集は、デスクについて、制作進行を複数人管理する管理職だと説明しています。
制作進行3〜4名に対してデスクは1名という編成が、募集要項の側から示されています。同じ作品に3人か4人の制作進行がいても、上の席は1つです。その1つの席は社内から上がるとは限らず、社外募集に出ることもあります。
デスク補佐を頼まれたら候補に入っている
打診は辞令の形では来ません。数本を回している最中に、デスクもやってみようと声がかかり、デスク補佐の業務がその日から加わります。制作進行として持っている話数は減りません。上に積まれる一方の仕事が増えていきます。
現に、兼務のまま1か月でへばり、1週間の休みに入ることもあります。体力の持ち方だけで見れば、この打診は歓迎できるものではないでしょう。
声がかかった時点で、候補には入っています。席が空くより先に、補佐という形の仕事が渡されます。
デスクは立ち上げ前から予算を持つ
制作進行が動き始めるのは、話数が割り振られてからです。決まった予算と決まったスケジュールの中で、カットを回して納品まで届けます。
逆に、デスクの持ち場はその手前から始まります。作品の立ち上げ前、準備段階から関わり、予算の組み立てとスケジュールの枠そのものに手を入れます。制作会社の外に出て、メーカーとのつながりができるのもこの段階からです。
制作進行のまま何年続けても、準備段階の席は回ってきません。
デスクまで5年か10年かは会社で変わる
デスクまでの年数は、出どころによって5年とも10年とも書かれています。
- 日本テレビ人材センター: 5年ほど
- 東京コミュニケーションアート専門学校: 10年ほど
- A-1 Pictures 新卒採用ページ: 5〜8年目
とはいえ、開きを作っているのは本人の速さより会社の作品本数です。プロダクション・アイジーの求人は、作品本数が多いため、プロデューサーを目指す人にチャンスがあると書いています。
デスクの先にあるプロデューサーの仕事
A-1 Picturesの新卒採用ページは、デスクに就いてからさらに4〜5年を経てプロデューサーになる方が多いと書いています。制作部のトップに置かれる立場で、就職後の数年でそこまで登りつめる人はほとんどおらず、デスクを経たうえでさらに長い下積みが要るという目安です。担当話数を回している段階から直線で届く距離ではありません。
RAKU-JOBに出ているOLMのプロデューサー求人は、仕事の中身として、監督やシナリオライター、キャラクターデザイナーの営業と手配、クライアントとの交渉、作品の収支バランスを考えたコスト管理、デスク以下の制作スタッフの管理を並べています。作品を前に進める役ではなく、誰に頼むかと、いくらで作るかを決める側の仕事が書かれています。
たとえば、このうち営業と手配は、制作進行の日々とつながっています。LOマンや作画監督の空きを埋めるためにアニメーターへ声をかけ続けた経験が、そのままスタッフ手配の実績として残るからです。新人のうちはデスクから、100人に声をかけてひとり見つかれば良いほうだと言われる現場もあります。
制作進行から演出に移るには何から始めるか

アニメ制作会社の多くは、制作部と演出部が分かれています。
演出は新卒でいきなり配属される部署ではありません。制作進行として入った人が演出に移るには、社内で部署をまたぐか、演出職を置いている会社を選び直すかのどちらかしかありません。
希望を上司に先に伝える
始まりは上司への一言です。
実際に、自分がどうなりたいかを上司に伝えると、勉強させてもらえます。制作進行から演出へ動いた人の出発点はそこです。希望を伝えない限り、会社は目の前の進行業務の担い手としてその人を置き続けるでしょう。
A-1 Picturesでは、演出や監督といった制作の方向か、プロデューサーなどのビジネスサイドかを考える機会が社内に用意されています。こうした面談の場がある会社ばかりとは限らず、枠がない会社では誰にいつ伝えるかが本人の判断に委ねられます。
コンテを描いて監督に見てもらう
伝えた次は、手を動かす番です。
現に、演出に移った人の中には、進行の辛さに耐えながらコンテを描いて監督に見てもらい、やがて演出になった例があります。見せる相手は、担当作品の監督です。
コンテが描けるようになると、仕事の受け方そのものが変わります。絵で見せられる進行と、口で希望を言うだけの進行とでは、監督が次に何を任せるかが変わってきます。
演出部のある会社かどうかを確かめる
移れる会社と、そもそも移り先がない会社があります。
A-1 Picturesでは原画、動画、仕上げ、演出の技術を社内で磨けます。演出は新卒ですぐに入れる部署ではなく、社内で機会を待つ形です。RAKU-JOB掲載のproject No.9の制作進行募集には、制作デスクやプロデューサー、あるいは演出や監督へ進めると記載があります。
一方で、CG制作会社は、演出部を持たない会社の例です。ここの制作進行から演出や監督までは、届きにくい距離です。
転職先を選ぶ段階で確かめるのは、演出部が社内にあるかと、進行からそこへ移った人が実際にいるかの二点です。
制作進行の経験を活かして転職できる仕事
制作進行の求人は増えています。JAC Recruitmentの当社実績では前年比1.25倍、採用ニーズは広告業界とTV番組制作・芸能プロダクションで広がっています。転職者の前職も映像制作会社や広告代理店、ゲーム企業と幅があり、職種間の行き来があります。
広告や実写映像の制作進行
制作進行の想定平均年収は約574.1万円、ボリュームゾーンは400万〜700万円です。映像・広告・Web・ゲームを含む広義の制作進行の数字で、アニメ1社だけを見た金額ではありません。アニメの制作進行がそのままこのボリュームゾーンに乗るとは限らない点は先に置いておきます。
案件の大型化と短納期化が進むいま、外注先との折衝を任せられる経験者が求められています。評価されるのは、撮影や編集の流れを理解したうえでスケジュールとコストを管理できる経験です。アニメの制作進行が毎日やっているのは、話数ごとの外注先とのやり取り、上がってこない素材の督促、納期の組み直しです。この動きは、実写や広告の現場でもそのまま業務になります。
もっとも、募集の中心にいるのは30代前半から40代の経験者で、同じ待遇の枠が今すぐ開くとは限りません。在籍年数ではなく、担当話数を最後まで自分で通した記録に差が出ます。誰と組み、どこで遅れ、どう戻したか。職務経歴書に書けるのはこの単位でしょう。
Web制作のディレクター
アニメ制作会社でしばらく制作進行を務めた後にWeb制作会社へ移り、現在はディレクターとして映像のクオリティ管理と全体進捗を見ている例があります。進行管理という軸は変わっていません。
担当する範囲が変わりました。制作進行の立場では触れにくかった予算交渉や他社との協議、営業活動まで担当しています。アニメの現場で数字を握っているのはデスクとプロデューサーで、進行の手元には見積もりも契約条件も流れてきません。ところが、Web制作の規模になると、進行を見る人がそのまま金額の話をする席に着きます。
アニメ宣伝など製作側の仕事
制作進行からソニーやスクウェア・エニックス、ANIPLEXなど、作る側から売る側に移る人もいます。声優事務所やグッズ制作会社、Web系出版社へ進む例もあります。
宣伝側へ移るには、制作進行の仕事を人並み以上の速さで回せていることが前提です。覚えるのに人より時間がかかった人と、半年で覚えて残りの時間を別の動きに使った人とでは、同じ期間でも手元に残るものが違います。
制作進行はやめとけと言われる仕事なのか
制作進行で入社した人のほとんどが3か月で辞めるという話をネットで見た、という知恵袋の投稿があります。転職を考え始めたころの目の前に、まずこの噂が出てきます。やめとけという言い方は、辞めた人の理由と求人票の数字と、この手の噂が混ざったまま流通しています。
3か月で辞める人は目標が漠然としている
アニメに携わりたい、でもやれることがないから進行で入ってくる人が多い、というのが現場側の見方です。入り口としては間口が広く、未経験でも採用の枠が残されています。
ところが、漠然とした憧れしかない人から辞めていきます。制作進行の一日は、素材の受け渡しと締切の管理と、上がってこないカットの催促です。アニメが好きだという気持ちだけでは、この作業を毎日続ける理由になりません。3か月という区切りが噂の形で広まるのは、最初の担当話数を回し切る前に見切りをつける人が一定数いるからでしょう。
制作進行だけでなく、アニメ業界の労働環境全体がやめとけと言われる背景を先に知っておくと、自分の状況を切り分けやすくなります。
▶ アニメ業界はやめとけと言われる理由とは?向いている人の特徴など解説!
給料の上限が低くて離職する人が多い
制作進行としての給与の上限が少ないため短い期間で離職する人が多い、という回答が日本アニメーター・演出協会の実態調査報告書2019の自由記述に書かれています。
求人票の側から上限を見ると、プロダクション・アイジーの制作進行の募集は年収300万〜400万円です。提示額そのものは他業界の若手と大きく離れていません。
もっとも、裁量労働制で残業代は1円も出ず、基本給は新卒手取り16〜17万円という条件で働いていた制作進行もいます。拘束時間は撮影や納品の都合で伸びますが、伸びた分は給与に反映されません。月給を実際の労働時間で割り直すと、時間あたりの単価は下がります。
演出志望なら辛さに耐えられると言われる理由
アニメの監督や演出になりたいという夢を持った人なら、しんどくても頑張れます。元制作進行はそう振り返っています。演出志望であれば、現場で毎日見ているものが、そのまま将来やりたい仕事の中身と重なるからです。
実際に、毎日勉強になることが多く、次の作品を回すときはこうしよう、自分が演出になったらこのキャラはこう動かしたいという反省や構想が、進行の作業をこなしている最中に浮かびます。同じ拘束時間を過ごしても、演出に上がる前提で現場を見ている人と、アニメに関わりたいという理由だけで入った人とでは、手元に残るものが違います。
制作進行を続けるか辞めるかを決めるタイミング
あるスタジオでは、2年間に制作進行が3〜4名、デスクが1名、プロデューサーが1名辞めていきました。日本アニメーター・演出協会の実態調査報告書2019の自由記述に残された回答です。人が抜けたまま埋まらない現場は実在します。
転職を考えるのはやりがいを見失ったとき
辞めどきを決めるのは、在籍年数ではありません。何年やったからという区切りで、足が動くわけではないからです。
転職するときは、この仕事の手応えを見失ったときで、そこまで来た人は未練なく次に向けます。逆に手応えが残っているうちは、拘束時間が長くても、給料の上限が見えていても、辞める話にはなりません。しんどさと辞めどきは、別の軸の話です。今の現場で自分のやっていることの意味が見えなくなった日に、線が引かれます。
実際には、この基準に当てはまらない抜け方もある話です。仲良くしていた先輩も後輩もみんな辞めていき、周りが先に抜けていくことに耐えられなくなって自分も退職する人もいます。手応えが残っていても、現場を支えていた人間関係のほうが先に崩れれば、それが辞めどきになります。
辞めるなら担当話数の区切りで
入社して間もない時期は、まだ自分の話数を持たされていません。この状態のうちなら、仕事を途中で放り出すことにならずに抜けられます。
逆に、話数を持てば、条件は変わります。担当が動いている最中に抜けると、そこに穴が空いてしまうためです。抜けるタイミングは、担当話数の納品が終わった区切りに寄ります。
半年目で過労により1か月入院し、1年で辞めてデザインや編集の会社に移った人もいます。ここまで体が止まってからでは、次の担当話数の区切りを選ぶという判断自体が難しくなります。
エンタメ業界の転職を、業界出身者に相談したい方に
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まとめ
制作進行の次のルートを開くのは、在籍年数ではなく、手元に残った担当話数の記録と、社内で口に出した希望です。デスクの席は作品ごとに1つで、演出部は会社によって有無が分かれ、他業界の募集は経験者を中心に組まれています。どの分岐も、待っていれば順番が来る作りにはなっていません。
続けるか移るかは、どちらが正しいという話ではありません。社内で上を目指すなら、次の話数を納品まで回し切ったうえで、デスクか演出かの希望を上司に伝えるところから動きます。外に出る選択をするなら、担当話数の区切りを見定めて、職務経歴書に書ける単位で自分の担当を整理するところから始めてください。
アニメ業界の求人を扱うエージェントは、制作進行の経験をどの職種に振り替えられるところまで見ています。
▶ 【2026年版】アニメ業界に強い転職エージェントおすすめ8選!職種別の選び方も解説
制作進行のキャリアプランでよくある質問
演出志望でなくても制作進行を続ける意味はありますか
はい、続ける意味はあります。
進行管理という軸そのものが業界を越えて通用するため、演出を目指していなくても広告や実写映像の現場でキャリアを積み直せます。
アニメ宣伝の職種に転職することはできますか
条件つきでできます。声優事務所やグッズ制作会社、Web系出版社へ進む例はあります。
選考で見られるのは、制作進行の実務を人並み以上のスピードで回せているかという一点です。この基準を満たさないまま応募先だけ広げても、通過率は上がりません。
話数を担当する前に辞めるのは早すぎますか
早すぎることはありません。
基準になるのは在籍月数ではなく担当の有無で、話数を持たされたあとは納品の区切りまでタイミングがずれ込みます。
制作進行の経験は異業種の面接でどう伝えればいいですか
現場の細部より、管理の型を先に伝えます。
アニメ特有の用語をそのまま出しても伝わらないため、外注先を何社抱え、遅れをどう検知して立て直したかという順序で語り直すと、面接官に届きやすくなります。